首都圏でニーズの高いマンションリフォームで、グッドデザイン賞を受賞した「中古マンション再生システム」や、女性ならではの視点で提案するリノベーションの秘訣とは。
私が考える良い家は、「温熱環境」と「空気環境」が十分に配慮された家です。
- これからリフォームされる方に向けて、リフォームする際に大切にしてほしいことは何か、アドバイスをいただけますか？
- 大井さん：リフォームを計画するのにあたって重要なのは、「なぜリフォームが必要なのか？」という動機を家族全員で整理すること。さらに、「あれもこれもやりたい」が同列だと予算オーバーになりますので、その優先順位を付けておくことが必要です。お客様とのミーティングを重ねていくうちに、私共もだんだんお客様の本当にやりたいリフォームの姿が顕在化してきますが、やはり、事前に様々なリフォーム事例を見て参考にしていただき、「どういう暮らし方が良いのか？」「家族にとって最も良い住まいのあり方」などイメージしていただきリフォームを準備していただければと思います。良い意味で、家の中で緊張感を持たずダラダラと生活ができて、誰にも気兼ねなく暮らせる家、リラックスできる住まいを目指して是非、リフォームをお考えください。
- これまで携わってこられて、一番印象に残っているリフォーム事例やエピソードをお聞かせください。
- 大井さん：現在もお付き合いさせていただいてるお客様で、250㎡くらいあるマンションの大がかりなリノベーションが印象に残っています。一般的な商品はいっさい使わず、ほぼオーダーメイドで施工しました。壁はすべて大理石でクロスはシルク、ドア・調度品・家具も全てオーダーメイドです。大理石にいたっては宝石にするようなイエローオニキス※2という大理石を希望されました。イエローオニキス大理石は国内での調達が難しいので、中国の知人を頼って調べたところ、偶然、その方の親類が石山を所有して石切りの仕事をされていることが分かり、苦労して手に入れました。輸入時も様々なハードルがあり、関税処理の問題で施工スケジュールが組めず、壊れやすく破損も予想されるため、歩留まりの計算が難しく見積り作成も大変な作業でした。現地中国で建材用に板にしたイエローオニキス大理石を3,000枚を用意しましたが、船便での荷積み、輸送、荷下ろしを経て品質が悪かったり割れて使えなかったりして、最終的に施工に必要だった500枚+予備50枚に対し600枚くらいの確保となり本当にギリギリでした。1枚の重量もかなりあり、施工時も非常に苦心しましたし、大理石探しから完成に至るまで1年以上かかった案件です。お引渡し後はお客様にも大変喜ばれましたので、苦労した甲斐があってとても良い思い出になっています。
- ※2：イエローオニキスは宝石の一種で古来から風水カラーにちなんで金運を高めるとされているパワーストーン。イエローオニキス大理石は高級建材として知られている。
- 住まいづくりのプロから見た、「良い住まい」の条件を教えてください。
- 大井さん：良い住まいの条件は、そこで暮らしていく中で人の五感に心地良い家だと思います。私が考える良い家のテーマは、温熱環境と空気環境が十分に配慮された家です。家づくりにはコストもかかりますので、設備の利便性や意匠性以外に環境面を含め全て完璧にすることはできないかもしれません。色々な選択肢の中で検討する必要がありますが、健康的な生活ができることが最も大事だと思います。家の中での具体的な健康被害を申し上げますと、限られたスペースに物をたくさん置いている影響で部屋の中の空気が回らず、また、結露の元になる水分を大量に発生させるガスストーブを使用している場合、換気を十分に行えば問題ありませんが、そうでないとカビが発生して人体に悪影響をもたらします。そういった温熱環境と空気環境を改善することで、健康的な良い住まいになると考えています。
- この取材は新型コロナウィルス感染拡大防止のため、オンラインで実施しました。
