住まいの省エネ推進が国の大きな政策目標となり、2020年を目途に新築住宅に一定の省エネ性能を義務付けることが予定されています。それに向けて、住まいの省エネ性能を示す値として「一次エネルギー消費量」※と呼ばれるものが用いられるようになりました。この値をある一定以下にすることが新築住宅の目標となります。

しかし、その目標値と同時に「外皮性能」と呼ばれるものも、住まいの省エネ性を表す数値として用いられています。「外皮」とは、住まいの外側をとりまく床、壁、屋根(天井)を指し、この断熱性能を表わす数値です。

実は「一次エネルギー消費量」は、太陽光発電システムでたくさん発電すれば、消費量から発電量が差し引かれて、数値上では消費量が少なくなります。つまり、仮に断熱性能が低くても太陽光発電量が多ければ、一次エネルギー消費量は少ないということになるのです。

しかし、これは省エネであっても健康な住まいではありません。住宅が高い断熱性を備えることは、外気温が高くても低くても室温を快適に維持することができ、それが健康な住まいにつながるからです。

※一次エネルギー消費量とは、自然界から取り出した石油・石炭などの加工されていないエネルギーのこと。電気や都市ガスなどに加工されたものは「二次エネルギー」と呼ばれます。

外皮性能を高めるためには断熱材をしっかりと補充することが必要です。
とくに20年、30年前に建てられた家では、壁の中に断熱材が入ってはいるものの、量が少なかったり、壁の中で湿気を吸って性能が落ちていたり、壁の中で位置がずれてしまって所定の性能を発揮できていないものがあったりします。普段の暮らしの中では、壁の中を覗くことができず、断熱材の状態はわからないのですが、外壁・屋根リフォームはそれをチェックするいい機会です。

また、断熱材は高性能化が進んでおり、より薄くてもこれまで以上の性能を発揮できるようになっています。壁の厚みを変えなくても改修により高い断熱性能が期待できます。

断熱性能が高まれば、より少ない暖房で部屋の室温が上がります。また日本では夜間の暖房を切るのが一般的ですが、仮に切っても断熱性能が髙ければ朝まで室温はそれほど下げずにすみます。

断熱工法には、外壁の内側(柱の外側)にボード上の断熱材を張るもの(外張り断熱)と、外壁と室内側の壁の中に、断熱材を充てんする方法(充てん断熱)の大きく2種類があります。

外張り断熱は、柱の外側で断熱するので、柱などの構造体も外気の影響を受けにくくなるという効果があります。鉄骨構造やコンクリート造の場合は、鉄骨やコンクリートが冷たくなったり熱くなったりすることを防ぐので、より断熱性能が高まります。

木造の場合は、もともと木材は熱の影響を受けにくいので、それほど大きな差が出ることはありません。また、外張り断熱にすると壁が厚くなるので、隣家との境界が近い場合はやや不利になります。

一方、充てん断熱は、壁の中に断熱層をつくるので壁の厚みが変わることはありません。しかし、壁の中には柱があり、ここで断熱材は分割されることになります。隙間ができないように施工することが重要なポイントです。

発泡式の断熱材を現場で吹き付ける工法なら、断熱材が膨らみながら入り込んでいくので、隙間が残る心配がありません。住まいの構造や、求める断熱性能、費用などを総合的に判断して断熱方法を選びましょう。