照明器具には、天井に直接つけるシーリングライトのほかにいろいろな種類があります。
天井の内部に照明機器を埋め込むダウンライトは、天井をスッキリさせてくれます。
リビングのメイン照明として使われるシャンデリアは、装飾性が高く豪華ですが、天井が低いと圧迫感を感じるので注意が必要。天井から吊るすタイプのペンダント照明は、主にダイニングで使われます。
床に置いて使用するフロアスタンドは、部屋のコーナーなどに設置。そのほか、小さなテーブルの上に置くテーブルスタンド、壁に設置するブラケット照明、絵画などを照らすスポットライトなどがあります。

これらの複数の照明を、ライフスタイルのシーンに合わせて組み合わせていくのが多灯照明です。例えば、家族や友だちと食事をするときには、ダイニングテーブルの上にあるペンダント照明をつけて食べると、まわりが暗くなって落ち着きが出てきてきます。暖色系の照明ならば料理もおいしく感じるはず。まわりが暗すぎないようにダウンライトも一緒につけるとより良いでしょう。

食後、リビングでくつろぐときには、ソファ近くのフロアスタンドをつけて読書をしたり、絵画にスポットライトを当てて過ごしたりするとリラックスすることができます。また、多灯照明はくつろぎのシーンに合わせて照明をつけたり消したりできるので、立体的なライティングができるばかりでなく、消費電力を抑えることができます。

自然光や照明などが発する光には「色温度」があり、その単位を「ケルビン」であらわし、数値は色温度の高さに比例します。自然光の場合は、日の出や日の入りの色温度は約2,000ケルビン、晴れた日の日中で約5,000ケルビン、晴天の青空は約8,000ケルビンです。
市販の照明器具のあかりも色温度が分かれています。メーカーによって、明るさの呼び名などが違いますが、昼光色が約6,500ケルビン、昼白色が約5,000ケルビン、電球色が約3,000ケルビンになります。

色温度が高いほど青くクールな色になり、低いほどオレンジ系の色になります。実は、色温度によって人間の気持ちも変化してくるもの。高いほど元気さやさわやかさを感じ、低いほどぬくもりやくつろぎを感じます。

そのため、子どもの勉強部屋や仕事をする書斎、キッチンは、明るく集中しやすい昼光色や昼白色にするのがおすすめです。ベッドルームやダイニングテーブル、フロアスタンドは落ち着く電球色にすると良いでしょう。最近のＬＥＤ照明は調光機能がついているものがありますから、時間帯などによって、照明の色を変えることも可能です。

多灯照明をさらに進化させたのが、「タスク・アンビエント照明」です。タスクとは仕事や作業、アンビエントとは環境や周囲のこと。主にオフィスや工場、病院などで使われてきた照明方法ですが、最近は一般住宅でも取り入れられるようになりました。

タスク・アンビエント照明とは、「まわりを照らすためのあかり」と「作業のための対象物を照らすためのあかり」を組み合わせて、家事などをより効率的に進められるようにする照明方法。
アンビエント照明では天井や床、壁などを照らします。特に間接照明にすれば、実際の照度以上に空間を明るく感じさせることが可能。
また、照明を天井、床、壁に直接当てることで、その光はまわりに広がり、さらに明るく感じられるでしょう。タスク照明ではダイニングやリビング、キッチンカウンターなどを照らします。

アンビエント照明で必要最低限の照度を確保し、タスク照明で実際に作業するところだけを明るくすれば消費電力が抑えられるので、省エネにもつながります。オフィスの場合、通常のシーリングライトによる全体照明と比べて、タスク・アンビエント照明では約40％の省エネ効果があったという例もあります。