
バルコニー・ベランダ
更新日:2025年08月12日
マンションで子どもの転落事故を防ぐには? ~リフォームでできる安全対策~ NEW
掲載日:2025年8月12日

子育て中のご家庭にとって、住まいの中の“安全”は何よりも優先したいテーマです。特にマンションに住んでいる方にとって心配なのが、「子どもの転落事故」。高層階に限らず、2階や3階でも重大事故につながるケースが少なくありません。
実際、毎年のように報道されている子どもの転落事故の多くは、窓やベランダからの転落・・・・・
孫がいる私としては、そういった報道を見るたびに、自分ごとのように非常に心を痛めています。事故の原因は、わずかな不注意や「いつの間にか我が子が登っていた」といったほんの小さな油断です。ですが、少しの工夫やリフォームによって、そのリスクを減らすことができます。
「子どもの転落防止対策」を中心に子供にとっての安全対策について、具体的な工夫をご紹介します。ぜひ、参考にしてみてください。

1. 窓に“開けすぎ防止”のストッパーを
子どもは好奇心旺盛。掃き出し窓はもちろん、腰窓であっても椅子や棚などを使って窓までよじ登り、簡単に開けてしまうこともあります。
そこで効果的なのが「開口制限ストッパー」の取り付け。これは、窓が一定以上(例:10cm)開かないようにする器具で、防犯用という役割もあります。後付けできる簡易タイプならホームセンターなどでよく売っていますね。
加えて「補助鍵(セカンドロック)」も有効です。子どもの手が届かない高さに鍵を追加で設けることで、勝手に窓を開けるリスクを減らせます。こちらも防犯上も有効でしょう。
<ポイント>
● 窓を10cm以上開けられないようにする
● 子どもの手の届かない高さにロックを設置
2. ベランダの“足がかり”をなくす
ベランダは家庭内で最も転落事故が多い場所のひとつです。
特に多いのが、「子どもがエアコンの室外機や収納ボックスに乗って、手すりを乗り越えてしまう」というケース。
その対策としては、まず足場になるものを撤去または固定することが重要です。エアコンの室外機は動かせないケースが多いですが、登れないようにする「室外機カバー」や「転倒防止柵」を設置するリフォームが有効です。
さらに、「手すりの隙間をふさぐ」「登りにくくする」対策として、転落防止ネットやアクリルパネルの設置もおすすめです。透明パネルなら視界を遮らず、美観も損ねません。
<ポイント>
● 室外機やボックスの上に登れないようにする
● 手すりの隙間を塞ぐ(ネット・透明板)
● 足をかけにくいデザインに変更することも検討

3. 家具の配置を見直して“登れない空間”に
室内にある家具も、子どもにとっては「登れる道具」です。
特に注意したいのが、窓のすぐそばにあるソファ・チェスト・棚など。これらがあると、子どもが簡単に窓に手をかけられる高さまで到達してしまいます。
家具の配置を見直すだけでなく、思い切って壁面収納に変更するリフォームや、固定式の収納棚にすることで、安全性がアップします。地震対策としても有効ですね。
<ポイント>
● 窓の近くに登れる家具を置かない
● 壁面収納や造作家具で登れない構造に

4. 安全ガラスや飛散防止フィルムで“割れても安心”
窓ガラスが割れると、それだけでも大けがの原因に。
さらに、割れた窓から子どもが落下するリスクもあります。
そこで有効なのが、飛散防止フィルムの貼付。これは透明なフィルムを窓に貼ることで、ガラスが割れても破片が飛び散りにくくなります。
また、より安心を求めるなら強化ガラスや合わせガラスへの交換を検討するのもありでしょう。これらは衝撃に強く、万一割れても破片が細かく砕けるよう設計されています。
<ポイント>
● 飛散防止フィルムはDIYでも施工可能
● 強化ガラスや合わせガラスへの交換でより安全に

5. 家族間の“安全ルール”を作る
設備面の対策だけではなく、「人の意識」も大切です。
子ども自身が、ベランダや窓の危険性を理解することは難しいですが、繰り返し教えて習慣化することは可能です。
たとえば、
「ひとりでベランダに出ない」
「窓はおとなと一緒に開ける」
「登ってはいけない場所がある」
といった家庭内ルールをつくり、家族全員で意識を共有しましょう。
子どもの年齢に応じて、「なぜ危険なのか」をわかりやすく説明することも大切です。
6.その他、細かな工夫をいろいろと・・・・
東京都では、マンションにお住まいの方が子供の安全確保のための改修工事を行う際に補助金が受けられる「「子供を守る」住宅確保促進事業」という制度があります。
東京都民でないと補助金を利用することはできませんが、この補助制度を利用するための「補助対象となるリフォーム」の項目は、住まいのなかでの子供の安全面をアップさせるための工夫として、マンションのみならず戸建て住宅でも参考となるものです。
「子供を守る」住宅確保促進事業 補助対象となるリフォーム(住戸の安全性の向上を図る取組)
=============================
・バルコニー内エアコン室外機等の設置場所へ高さ1,100㎜以上の柵の設置
・バルコニーに面する窓へロック付や錠付クレセント等の設置
・バルコニーに面する窓へ開口制限ストッパーや補助錠等の設置
・バルコニーに面する窓へ子供の手の届かない位置にクレセントの設置
・バルコニー内にチャイルドロック等が付いた避難ハッチの設置
・チャイルドフェンス等の設置
・転倒防止等手すり設置(玄関、トイレ、洗面所、浴室)
・転落防止手すり等設置(バルコニーや窓)
・浴室の扉へ子供の手の届かない位置に外からの解錠が可能な鍵の設置
・トイレの扉へ外から解錠が可能な鍵の設置
・火傷防止カバー付き水栓、サーモスタット式水栓等の設置
・チャイルドロックや立消え安全装置等が付いた調理器の設置
・ドアや扉への指挟み防止対策の実施
・シャッター付き等感電防止コンセントの設置
・壁、柱等の出隅(ですみ)の面取り対策の実施
・段差解消工事
=============================
まとめ:安全対策は“住宅環境+習慣”の両輪で
子どもの転落事故は、「少しの対策」と「少しの意識」で確実に減らせます。小さな工夫やリフォームの積み重ねでリスクは大きく軽減できるはず。
子供の転落事故はもちろん、住まいのなかでの子供の事故を防ぐために、ぜひ、いろんな工夫を検討し、1日でも早く、できるところから始めてみませんか?
窓やベランダまわりの安全対策については、政府広報オンラインでも詳しく紹介されています。
気になる方は、あわせてチェックしてみてください。
「万が一」を防ぐために・・・・・
◆執筆者
一般財団法人住まいづくりナビセンター 専務理事
河田 崇
河田 崇
元 独立行政法人 住宅金融支援機構 部長
工務店向けの省エネ基準解説書や木造住宅工事仕様書の作成などに従事
マンション管理士 建築基準適合判定資格者 2級ファイナンシャル・プランニング技能士
よかったらシェアしてね